自閉スペクトラム症の感覚の問題について
自閉スペクトラム症のお子さんは、感覚が敏感であったり鈍感であったりするなど、感覚面に問題を持っているお子さんがいます。
大きな音に敏感で耳ふさぎをしているお子さんは「聴覚が過敏なんだな」と分かりやすいですね。
味覚が敏感であれば偏食があったりします。
ただ、「耳ふさぎや偏食もないし、うちの子は感覚過敏ではない」と思われている方も多いと思います。
でも実は、自閉スペクトラム症を持つ約8割以上の方が感覚の問題を持っているという研究もあり、自閉スペクトラム症のお子さんの大半は感覚の問題を持っていると言われています。

当てはまる部分があるかもしれないので、
目を通してみてくださいね。
感覚に問題があるってどういうこと?
人間の感覚には、五感と言われている触覚・視覚・聴覚・味覚・嗅覚があります。

またその他にも前庭覚と固有覚というものがあります。

これらの感覚が敏感だったり鈍感だったりすると、感覚の問題を持っているということになります。
感覚の問題には大きく分けて4つあります。
- 感覚過敏
- 低登録(鈍感)
- 感覚探求
- 感覚回避

それでは一つ一つ詳しく見ていきましょう
感覚過敏
感覚過敏
視覚 | ・いろいろなものが目に入ってきて注意散漫になる ・注目すべきところに注目できない ・形や記号や色の違いに気づきやすい (部屋の配置や髪型などの変化にも気づきやすく、その変化が許せない場合があります) |
聴覚 | ・大きな音や機械音など苦手な音がある ・音や声の苦手な音域がある ・音の抽出が難しい (雑音までよく聞こえるので、話しかけられている声が聞き取れない) |
触覚 | ・砂・粘土・水など苦手な感触がある ・服の感触を嫌う ・髪を切る・歯磨き・耳かきなど苦手 ・雨や風を痛く感じるなど独特な感じ方がある |
嗅覚 | ・臭いに気づきやすい |
味覚 | ・特定の味を嫌がる ・お好み焼きなどいろいろな具材の味が混ざっているのが苦手 ・偏食がある |
前庭覚 | ・ブランコなど揺れる遊具を怖がる |
固有覚 | ・力が入りにくい ・しっか物を持てない |
低登録(鈍感)
低登録(鈍感)
聴覚 | ・呼んでも気づかない |
触覚 | ・なんでも触る ・痛みに鈍感 ・指先の感覚が鈍く不器用 |
前庭覚 | ・姿勢が悪い ・よく転ぶ ・体を揺らしたり回転して遊ぶ |
固有覚 | ・力が強く物の扱いが雑 ・ジャンプしたり刺激を入れて遊ぶ ・つま先立ちで歩く |
感覚探求
感覚探求 …感覚刺激を体に入れようとする行動。
例えば、
- 前庭感覚刺激を体が求めているためブランコにずっと乗り続ける
- 固有感覚刺激を体が求めているため、ジャンプをし続ける
- 触覚刺激を体が求めているため、お気に入りのタオルが手放せない
などの行動があります。
感覚回避
感覚回避 …苦手な刺激を回避する行動
例えば、
- 視覚や聴覚の過敏さから、人混みに行けない
- 雨が当たるのが痛く感じるため、雨の日は外に出られない
などの行動があります。
感覚の問題についてよくある質問。更に理解を深めてみましょう
保護者の方とお話をしていると、
「なんとなく感覚過敏があるのかな?」と、お子さんの感覚の問題に気づいていても、
「どうしてこうなるんだろう?」と疑問に思われることがあるようです。
感覚の問題と言っても、奥が深く複雑で理解がなかなか難しいですよね。
ここではよくある質問から理解を深めていきましょう

感覚過敏は治らないの?
苦手な感覚は年齢が上がるにつれて、少し克服できたり、全く気にならなくなる場合があります。
ただ、年齢が上がっても苦手な感覚は苦手なままである場合もあり、一概には言えません。
一度大丈夫になっても、時を経てまた苦手になる場合もありますし、今まで平気だった感覚が苦手になることもあります。
その時々での対応が必要になります。

同じ感覚なのに嫌がる時もあれば、平気な時もあります。
感覚と情緒は深い関係があると言われていて、
心の調子によって感覚の受け取り方が左右されることがあります。
調子が悪い時は、平気になっていた感覚がまた嫌になったり、楽しい時は苦手な感覚も気にならなくなったりします。
「大丈夫な時もあるのだから、わざと嫌がっているんじゃないの?」
「気分によって違うなんて、わがままなんじゃない?」と思われるかもしれませんが、
お子さん自身でコントロールできるところではないので、わがままではありません。

聴覚過敏で大きな音が苦手なのに、テレビはとても大きい音にしたがります。
聴覚過敏だからと言ってすべての音刺激に対して過敏という訳ではありません。
同じ音刺激でも、苦手な音刺激と平気な音刺激があります。
また、テレビを大きい音量にしたがるのは、音刺激に敏感でテレビの音以外の音も耳に入ってくるからかもしれません。
周りの話し声や、歩く音、空調の音などテレビ以外の生活音が、テレビの音と同じくらいの音量で耳に入ってくるため、テレビの音が聞き取りづらく、音を大きくする可能性があります。
おわりに
今回は、自閉スペクトラム症の感覚の問題についてのお話でした。
感覚の問題を持っているお子さんは意外と多いのですが、感覚の問題にどのようなものがあるのかあまり知られていないので、理解されずに苦しんでいるお子さんがたくさんいます。
お子さんの行動だけに焦点を当てると、
「ふざけているのかな?」「どうしてできないの?」
と思ってしまいますよね。
なので、まずは「ふざけているような行動」や「何回教えてもうまくできない」の背景には感覚の問題があるかもしれないということを知っていただければと思います。
次回は感覚の問題についての対応方法を紹介しますので是非チェックしてみてくださいね。

見ていただきありがとうございました。
コメント
[…] 意外と知られていませんが、自閉スペクトラム症を持つ大半の方は感覚の問題を持っています(その1)自閉スペクトラム症のお子さんは、感覚が敏感であったり鈍感であったりするな […]
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